ユーザビリティテストの実施判断とリスク整理の仕方
ユーザビリティテストとは、製品(またはプロトタイプなど)を利用するユーザーの行動を観察することで、UI上の問題を検知するものです。
やり方としては、シナリオを用意をし、そのシナリオに沿ってプロトタイプを操作してもらい、半構造化インタビューを行う形で実施します。
では、前提としてユーザビリティテストは実施すべきなのか、また実施すべきであればどういった場合に実施すべきかについてまとめたいと思います。
対象となるバックグラウンド
WebサイトやWebサービス、モバイルアプリ、または実際に手に取れる製品などにおいて、
- 新機能、新商品のデザインを検討中
- 既存のUIの改修を検討中
といった場合を想定しています。
実施判断について
全ての制約を取り払えば、基本的にはどんな場合でも実施すべきと言えます。実際に製品を使うのはユーザーであり、「ユーザーがどう感じるか」が製品において最も重要なためです。
しかし、事業となれば必ず時間やお金、人員、ノウハウの有無など様々なリソース上の制約があります。そのため、コケたくない重要な場合にのみ行い、大きなリスクを回避する策として用いることは有用と言えます。
多くの場合に、次の2つのやり方で実施判断をしています。
①判断軸を作る
実施判断の軸は、企業としてや製品として何を大事にしているのか、によって変わります。そのため、まずは製品として掲げるUX原則などを決めても良いでしょう。
- シンプル・カンタン
- スピーディ
- スマート
- 正確で安心
ここからさらに、シンプルとはどういう場合を「シンプル」とするのか?まで細分化しておくと、「UX原則に抵触する恐れがあるのでテストを実施しましょう」と意思決定がしやすくなります。また、製品において一貫した体験を担保するためにも有効です。
しかし、実際に開発を行っていると原則に留まらず、さらに軸が必要となってきます。最初はUX原則に抵触しそうな場合は小規模でも良いので積極的に行うようにして、何度かユーザビリティテストを実施する中で、実施判断の軸を作ると良いでしょう。
- デザインの良し悪しが社内で判断しきれない
- リリース後にデザインを変更しづらい
- 該当機能の影響範囲が広い
- 該当機能の利用頻度が高い
- 該当機能の操作における重要度が高い
②リスクから判断する
リスクを洗い出し、そのリスクが許容できるものなのか、から判断をすることも可能です。一回の改修で様々なリスクがある際に、リスクそれぞれに打ち手を検討できるため、大型案件では実施することが推奨されます。
リスクを洗い出し、実施について検討する際は利用状況から考えます。
利用状況整理
- 誰の
- どんな状況における(場所や前後にしている行動)
- どんなタスクで(もしくは業務)
- どんな重要度のタスクで(必須性・任意性)
- 何が求められるタスクで(正確性・スピード・操作性・検索性 など)
- どうあるのが理想であり
- その理想を担保できない場合、リスクはどれほどと考えられるのか
- そして、そのリスクは許容とできるのか
このような項目から必要なものを列に、操作を行に取り、マトリクスにして考えると整理がしやすくなります。
また、ここでいう「リスク」とは何なのかまで細分化します。
- チャーンにつながる
- ブランドを毀損する
- SNSで炎上する
- エンゲージメントを下げる
こういった判断材料を揃えた上で、PM(Dir), UXリーダー, UXデザイナーとで議論します。